網膜色素変性の患者さんとサプリメントについて 印刷用ページ(PDF)

はじめに

網膜色素変性と診断を受けることは、多くの方にとって大変辛いことです。 明らかな効果のある治療が存在しない現在、少しでも進行をゆっくりにする方法がないかとお探しと思います。

現在入手可能な内服薬、サプリメントや広告がありますが、中には効果の疑わしいにも関わらず高価なものもあり、確かな情報を得て選択することが必要です。

そこで、科学的根拠となるデータが存在する物質についてを紹介いたします。ここに記載されていない物質については科学的データはありません。

筆者は外来での経験からサプリメントや薬を服用せずとも、進行が非常にゆっくりで、ある時期ほとんど進行しない方も多くいらっしゃることを知っています。必ずしも服用が必要とは考えていませんので、これらを強くお勧めするということではありませんが、何かを服用されるなら科学的根拠のあるものをと願っています。

一番のおすすめはビタミンA(あるいはカロテン)をたっぷり含む食物や野菜ジュースです。ビタミンAは内服で過剰に摂取すると蓄積して副作用が出ますが、野菜から取るものは蓄積しません。その他のビタミンや栄養も食物から取ることも治療の一つと考えてください。

また、サプリメント以外にも、強い日差しの中で長時間過ごす場合など強い光線を避けるための遮光眼鏡が進行を緩める治療のひとつと言えます。(普通のサングラスでは暗くなるので、特殊な遮光レンズを処方してもらうようお勧めします。まぶしさが軽減され見やすくなります。)

ただし、原因遺伝子の違いによって光による影響がある場合とない場合があるという動物実験が報告されていますし、過度に光に対して神経質にならないようにしてください。

【注意】

網膜色素変性の進行速度は遺伝子の変異の種類によってある程度規定されていると思われます。ですので、サプリメントなどの効果は限定的です。以下の情報はすべての遺伝子変異の方にあてはまる訳ではなく、中には逆効果の場合もあるようです。過剰に服用することは避け、自覚症状が悪化するような場合はやめておく方が良いでしょう。

(文責:高橋)

1 現時点で入手可能なもの

2 数年内に可能なもの

3 臨床研究の結果によって治療可能となるもの

4 網膜色素変性の患者さんは注意を要する薬

1 現時点で入手可能なもの

1-1 ビタミンA/ベータカロチン

  • 疫学的研究によると、毎日ビタミンAをたくさん摂取すると(15000 U/d) 網膜変性の進行を1年に2%遅らせることができます。 (ただし、誤差結果だという研究者もいます。2%遅延とは単純に考えると50年間服用を続けると1年分ぐらい遅くなるかもしれないということです。50年間続ける労力と効果を照らし合わせて判断してください) ただし大量のビタミンAを長期間取り続けることによる身体へのリスクも治療に際しては考慮しなければなりません。
  • 服用する場合は、年に一度、肝臓の酵素、そしてビタミンAの量の検査が必要です。

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1-2 DHA(ドコサヘキサ塩酸)

  • DHAはomega-3 polysataturated fatty acid であり、抗酸化物質です。
  • 患者さんのerythrocyte-DHAの濃度とERG(網膜電図)の振幅には関連性があることが証明されています。しかし、DHAとビタミンAを同時に摂取した網膜色素変性の患者さんとビタミンAのみを摂取した患者さんを4年間比べた最近の研究によると、DHAの追加による効果は見られませんでした。DHAの効果の有無を断定するには、引き続き臨床試験を行わなければなりません。

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1-3 ニルバジピン(カルシウムブロッカー、高血圧治療剤)

  • 高血圧の治療によく使われるカルシウムブロッカーという種類の薬の中で、ニルバジピンという薬は網膜に到達しやすく、網膜の変性を抑えるという動物実験が報告されています。ヒトでの効果はデータがなく不明です。
  • 高血圧の治療をされている方は、主治医に相談し、可能ならば薬をニルバジピンに変更してもらうのもよいかもしれません。

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1-4 ルテイン、ゼアキサンチン(カルテノイド)

  • ルテインとゼアキサンチンは体内で作ることの出来ない黄斑部の色素です。食べ物から摂取することができます。
  • ルテインは、黄斑の細胞を酸化による障害から守ってくれると思われ、経口摂取により黄斑色素が増えることが証明されています。
  • 米国の研究機関であるNational Institute of Health (NIH)では  加齢黄斑変性 かれいおうはんへんせい という別の病気について、 ルテインとゼアキサンチンが発症を遅らせる効果があるのか調べ始めています。 しかし、ルテインとゼアキサンチンが網膜色素変性で起こる網膜錐体視細胞の細胞死を防ぐことが出来るかは、まだ確認されていません。

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1-5 ダイアモックス、トルソプト、エイゾプト(炭酸脱水酵素阻害剤)

  • 網膜色素変性の初期から中期には、網膜の黄斑浮腫により視力が下がることがあります。 浮腫の原因はいくつかありますが、血管からの水分漏出による浮腫に対してはダイアモックスという薬が効果を示す場合があります。 今まで黄斑浮腫のある場合の治療にはダイアモックスの内服が行われていましたが、最近では点眼薬(トルソプト、エイゾプト)でも効果があるという報告があります。 すべての黄斑浮腫に効果があるわけではありません。むしろ2、3割のみ効果があります。
  • 内服では疲労感、腎臓結石、食欲不振、手がひりひりする、貧血などの副作用の為、使用が制限されることがあります。

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1-6 その他の治療

  • アスコルビン酸(ビタミンC)の摂取は細胞によいと考えられますが、それが網膜色素変性に効果的かどうかは、まだ証明されていません。
  • ブルーベリーについては、網膜色素変性の患者さんにとっての安全性や効果についての研究はされていません。
  • アダプチノールについては、ヘレニエンという物質が成分で暗順応を一時的に改善するとされています。 この成分に関する報告は1963年以降ないので効果については不明です。ルテインと同様カロテノイドとしての作用があります。

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2 数年内に可能なもの

2-1 イソプロピル ウノプロストン

  • 以前から緑内障の点眼薬に使用されている成分の一つですが、網膜細胞の変性を抑制する可能性があるとの報告があり、本当に効果があるかを確認するため、現在の点眼薬よりも濃度の濃い点眼薬について、現在いくつかの施設で治験を行っています。

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2-2 バルプロ酸

  • てんかんの内服薬としてすでに臨床で使われているお薬です。網膜変性を抑制するという動物実験(マウス)の結果から、現在臨床試験がアメリカで網膜色素変性の患者さんに行われています。

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3 臨床研究の結果によって治療可能となるもの

3-1 PEDF(成長因子の一種)

  • Pigment epithelium-derived factor (PEDF) は、動物モデルにおいて網膜変性を遅らせることが報告されています。
  • PEDF遺伝子を網膜に導入する遺伝子治療の研究が行われ、厚労省に臨床研究の申請がなされています。

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3-2 CNTF(成長因子の一種)

  • Ciliary neurotrophic factor (CNTF) は、動物モデルにおいて網膜変性を遅らせることが報告されています。
  • CNTFを作り出して供給する網膜色素上皮細胞をカプセルに入れたものを使ったフェーズ2の臨床試験が アメリカでUsher症候群や網膜色素変性の患者さんに行われています。カプセルに入れた細胞は、 手術を行って目に移植されます。

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3-3 臍帯細胞移植

  • 網膜変性を抑制する目的で、臍帯から取り出された細胞を網膜色素変性の患者さんの網膜下に移植する臨床試験が行われています。(その後中止になったようです)

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4 網膜色素変性の患者さんは注意を要する薬

4-1 アキュテイン、バイアグラ、ビタミンE

  • アキュテイン: にきびの治療に使用されている薬ですが、夜盲症、ERGの反応、暗順応を悪化させることが確認されています。
  • バイアグラ:男性の性的不全を治療する薬ですが、一過性のERGの変化 や視覚の変化をおこします。 成分のSildenafilはPDE5の抑制剤であり、視細胞で働くPDE6も阻害します。バイアグラの使用者の中には、 青い光が見えることを訴えますが、これは、この薬剤が網膜に影響していることを表していますので、 網膜色素変性の方は控える方がよいと考えられます。
  • ビタミンE:ビタミンEは抗酸化作用があり網膜の変性を抑制する可能性があり一日に800 IU程度の摂取は奨励されています。しかし、一方で過剰摂取は、網膜色素変性の進行を少し早くする可能性があるという報告があります。

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